「手が震える」「頭が真っ白になる」「音が出ない」
本番の舞台で、そんな経験をしたことはありませんか?
私も例外ではありません。何度ステージに立っても、あの独特の緊張感だけは、どうしても避けられないのです。
でも、ピアノを教えたり、他の演奏者の話を聞いたりするうちに気づいたことがあります。
それは——
「誰でも緊張する」ということ。
世界的なピアニストでさえも、ショパン国際コンクールに出るような人でさえも、緊張から逃れられるわけではないのです。
緊張は“悪者”ではない
私たちはつい、「緊張=失敗のもと」と思いがちですが、
実は、緊張は体が「今を大切にしている」サインでもあります。
緊張すると、アドレナリンが出て集中力が高まり、音のニュアンスや空気の変化を敏感に感じ取れるようになります。
つまり、適度な緊張はむしろ演奏にプラスなのです。
緊張と上手に付き合う3つのポイント
1. 練習の時から「本番を想定」する
本番と練習で大きく違うのは“環境”です。
照明・ピアノ・空気感・人の視線——これらが変わると、体は自動的に「いつもと違う」と反応します。
練習のときから、人前で弾くつもりで通す習慣をつけましょう。録画も効果的です。
2. 呼吸を「音楽と一緒に」整える
手が震えたり心臓が速くなるときは、呼吸が浅くなっています。
そんなときこそ、「音楽の流れに呼吸を合わせる」ことを意識してみてください。
息を止めず、フレーズの終わりでふっと息を吐くだけで、体が少しずつ落ち着いてきます。
3. 「緊張している自分」を否定しない
「緊張してはいけない」と思うほど、体は硬くなります。
むしろ、「今、少しドキドキしてるな」「でも、それでいい」と認めてあげること。
心を押さえつけず、観察するように受け止めることで、次第に呼吸が戻ってきます。
舞台に立つすべての人が、緊張している
私はこれまで、数多くの演奏者や生徒さんと接してきました。
本番前に緊張で顔がこわばる人もいれば、静かに内側で燃えている人もいます。
でも、全員が何かしらの形で緊張しています。
それは、音楽を大切に思うから。
一瞬一瞬を真剣に届けたいという想いの証です。
「自分がいちばんの味方になる」こと
本番のとき、心の中にはいろいろな声が聞こえます。
「間違えたらどうしよう」「あの人はうまいのに」——そんな考えがよぎるのは自然なことです。
でも、そのたびに、そっと自分に言ってあげてください。
「大丈夫、よくここまで準備してきたね」と。
自分がいちばんの味方になること。
それが、緊張と仲良くつきあうための大切な力です。
他人の評価よりも、自分が信じる音、自分が重ねてきた時間を信じてください。
「緊張を味方にできる人」になるために
もし、緊張に苦しんでいるなら、まずはその気持ちを責めないでください。
完璧を目指すよりも、「今できることを丁寧に弾く」。
ステージに立つたびに、少しずつ“慣れ”が生まれ、あなたの緊張も次第に形を変えていきます。
演奏のドキドキは、あなたが本気で音楽と向き合っている証。
その緊張が、音に命を吹き込む瞬間につながります。
おわりに
舞台の上で「緊張していない人」はいません。
でも、緊張と“うまく付き合える人”は確かにいます。
その第一歩は、「緊張を否定しない」こと。
そして、「自分が自分の味方であること」。
緊張は、あなたの音楽が本物であることの証。
その感覚を、どうか大切にしてください。

